研究課題
基盤研究(C)
生体防御は好中球によってその第一線が担われている。病原微生物の侵入が起こり得る部位は主に組織であることから、生体防御の観点から考えて、組織防衛が最も重要と言える。病原微生物が組織に侵入すると、その部位に局在する好中球に加えて、流血中から大量の好中球が集積する。このような流血中から組織への好中球の移動に、血管内皮をトランスミグレート(TEM)する過程がある。この過程の制御に、種々のサイトカインや接着分子のほか、NOの作用が指摘されている。しかしその意義や機序について充分に明らかでない。そこでNOが好中球TEMに対する作用を明らかにする目的で検討した結果、次の成績を得た。・ヒト臍帯由来血管内皮細胞(HUVEC)をNO合成酵素阻害剤で処理すると、好中球のTEMは促進する。・NOスカベンジャー存在下で、好中球TEMは促進する。・NO合成酵素阻害剤存在下でNOドナーを添加すると、好中球TEMは抑制される。以上より、HUVECが産生するNOが好中球に作用して、好中球TEMを抑制すると考えられた。・好中球とHUVECを共存させると、好中球内にNOの存在が確認される。・NO合成阻害剤で処理したHUVECでは、好中球内NOは上記に比べて量的に減少する。・グアニルシクラーゼ(GC)活性化剤で処理すると、好中球TEMは抑制される。・好中球をGC阻害剤で処理すると、好中球TEMは促進する。以上より、NOは好中球内のGCへの作用が機序の一部と考えた。このように、血管内皮細胞から産生放出されるNOは、非炎症時においては好中球のTEMを抑制することにより組織傷害を防ぎ、一方感染炎症時等ではNOの産生放出低下により好中球TEMを積極的に亢進し生体防御に寄与すると考えられる。以上、NOは好中球TEMに対して極めて合理的な動的制御に機能していると考えられる。
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