研究課題
基盤研究(C)
リポソームは癌免疫療法において樹状細胞(DC)に外来性の抗原を取り込ませる際のデリバリーシステムとして有望である。外来性の抗原をDCに取り込ませる際に、DC上のFcγレセプターを介して取り込ませるとMHCクラスI、クラスII分子の双方に効率よくペプチドが提示されることが示されている。そこで今回われわれは、IgGを結合させ、物理化学的性状を最適化した抗原封入リポソームがDCに貪食されると、抗原由来のペプチドがMHCクラスI、クラスII分子の双方に効率よく提示されるか、そして強い抗腫瘍免疫反応を誘導するかどうかを検討した。表面にポリエチレングリコールを結合しない200nm径のIgG結合リポソームが最も効率よくDCに貪食された。ヒト単球由来のDCが破傷風トキソイド(TT)を封入したIgG結合リポソームをCD32(FcγreceptorII)を介して貪食すると、IgGを結合していないTT封入リポソームまたはTTそのものを貪食した場合に比べて、TT特異的CD4陽性T細胞を強力に活性化した。また、卵白アルブミン(OVA)を封入したIgG結合リポソームをマウスDCに貪食させて皮下投与してから、OVAをモデル抗原として発現するリンパ腫細胞株E.G7-OVAを皮下接種すると、IgGを結合していないOVA封入リポソームまたはOVAそのものを貪食したDCを投与した場合に比べて、腫瘍の増殖を強力に抑制した。さらに重要なことに、あらかじめE.G7-OVAを接種したマウスにDCを投与する治療モデルでも、OVAを封入したIgG結合リポソームをDCに貪食させた場合に最も強力に腫瘍の増殖を抑制した。この研究成果は、DCに抗原を取り込ませる際に最適な物理化学的性状をもったリポソームを明らかにし、抗原をリポソームに封入してDCに貪食させ癌免疫療法に応用する道を開くものである。
すべて 2006
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Journal of Immunotherapy 29
ページ: 165-174
Journal of Immunotherapy 29(2)