研究概要 |
われわれは、平成16年度科学研究費(基盤C(2))を受け、RAS関連蛋白質を分子標的とした白血病の開発に従事した。平成15年に本来骨粗しょう症治療薬として開発されてきた第3世代ビスフォスフォネート製剤(BP)Zoledronate(ZOL)が強力な抗白血病作用を有し、さらにAbl特異的チロシンキナーゼ阻害剤imatinib mesylateの作用を相乗的に増強することを報告した(Kuroda et al.,Blood 2003)。平成16年度は、この研究をさらに発展させ以下のことを明らかにした。1)ZOLのみならず、もう一つの第3世代BPであるYM529にもZOLと同等の抗白血病効果があり、NOD/SCIDマウスに移植した患者新鮮白血病細胞にも効果を示した(Segawa et al.,Leuk Res 2005)。2)ZOLおよびYM529は白血病だけでなく肺がんおよび腎がん細胞株に対しても抗腫瘍効果を示した。肺癌においてZOLはパクリタキセル(Matsumoto et al.,Lung Cancer 2005)と相乗効果を有し、また腎癌においてYM529はインターフェロンαの作用を増強した(Yuasa et al.,Clin Cancer Res 2005)。3)前立腺がん細胞株に対してBPsは抗腫瘍効果を示すが、この作用はBPsによってRASの活性化が阻害されるためではなく、RAS以外のRAS関連蛋白の活性化阻害による(Nogawa et al.,Oncol Res 2005)。4)ZOLは直接的な抗腫瘍効果だけでなく、γδT細胞を介した免疫細胞性抗腫瘍効果を有する(Sato et al.,Int J Cancer in press)。 以上のように平成16年度の研究によってBPsの多彩な抗腫瘍効果が明らかとなり、現在欧米で進行中のBPsの抗腫瘍剤としての臨床治験に重要な基礎的根拠を示すことに寄与した。
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