研究課題
基盤研究(C)
われわれは平成15〜16年度科学研究費基盤(C)(2)を受け、RAS関連蛋白質を分子標的とした白血病の開発に従事し以下のことを明らかにした。1)骨粗しょう症治療薬として開発された第3世代ビスフォスフォネート、ゾレドロン酸(ZOL)は抗白血病作用を有し、さらにAbl特異的チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブの作用を相乗的に増強する。2)ZOLの抗腫瘍作用はp53非依存性であり、多剤耐性に関与するP糖蛋白による影響を受けない。ZOLは多剤耐性となった難治性白血病にも有効な薬剤となりうることを示唆した。3)ZOLはシタラビンの効果も相乗的に増強した。これらの薬剤の併用において、同時併用より、ZOL→抗がん剤の順番に投与するほうが併用効果に優れていた。4)ZOLのみならず、もう一つの第3世代BPであるYM529にもZOLと同等の抗白血病効果があり、NOD/SCIDマウスに移植した患者新鮮白血病細胞にも効果を示した。5)ZOLおよびYM529は白血病だけでなく肺がんおよび腎がん細胞株に対しても抗腫瘍効果を示した。肺癌においてZOLはパクリタキセルと、また腎癌においてYM529はインターフェロンαの作用を増強した。前立腺がん細胞株に対してBPsは抗腫瘍効果を示すが、RASの活性化が阻害されるためではなく、RAS以外のRAS関連蛋白の活性化阻害による。6)ZOLは直接的な抗腫瘍効果だけでなく、γδT細胞を介した免疫細胞性抗腫瘍効果を有する。われわれの報告を基盤としてイギリスおよびドイツで、イマチニブに対する効果不十分症例を対象に、イマチニブ+ZOLの臨床試験が開始された。このように本研究はトランスレーショナル・リサーチへの移行という当初の目的を一部達したと考えられる。現在本邦においても、本研究から得られた多くの知見をもとに、イマチニブ+ZOLの臨床試験の準備中である。
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