AML1/RUNX1の点変異は造血細胞の悪性化に関与すると考えられており、われわれも続発性骨髄異形成症侯群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)で高頻度にruntドメインを中心としたAML1の点変異がみられることを報告した。一方鎖骨頭蓋形成不全症の原因遺伝子であるRUNX2はその全長に点突然変異が認められている。そこでMDSにおけるAML1の点変異を遺伝子全長にわたって検索した。MDS156例中27例(17.3%)、MDS/AML(RAEB・RAEBt・MDSからの白血病)に限ると26/110例(23.6%)にAML1遺伝子の点突然変異が認められた。runtドメインを含むN末端側(exon3-5)の変異が18例、C末端側(exon6-8)の変異が9例であった。AML1の点変異を有するMDS/AML症例は、変異のない症例と比較して有意に予後不良であった。C末端側の変異は数塩基の欠失・挿入やイントロン内のスプライスシグナル変異で全例フレームシフトを生じ、不正な読み枠由来の長大な異常蛋白がキメラ蛋白様に付加した症例も4例あった。機能解析では、C末端側の変異はDNA結合能・CBF〓結合能は認められたが、転写活性化能が欠如していた。MDS/AMLではAML1の点変異がN末端側、C末端側ともに高頻度に認められ、予後不良因子であることから、AML1遺伝子の変異は疾患単位を形成する可能性があると考え、これらの結果を報告した。 点変異はDNA結合部位のほか、転写活性化ドメインや転写抑制に働くとされる部位など広範囲に分布し、その結果様々な転写調節機能異常が生じていた。この機能異常を解明するため、正常および変異AML1(AML1-MTG8および点突然変異体)を導入した細胞株を樹立し、転写因子複合体を精製した。現在、MALDI-TOF/TOF分析装置を用いて構成蛋白の同定を行っている。
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