AML1/RUNX1の点変異は造血細胞の悪性化に関与すると考えられており、われわれも続発性骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)で高頻度にruntドメインを中心としたAML1の点変異がみられることを報告した。さらにMDSにおけるAML1の変異を遺伝子全長にわたって検索したところ、RAEB、RAEBt、MDSからの白血病(これらをMDS/AMLと定義)のうち約1/4の症例にAML1遺伝子変異を認めた。AML1の点変異を有するMDS/AML症例は、変異のない症例と比較して有意に予後不良であった。AML1変異体の機能解析では、様々なDNA結合能・CBFβ結合能を呈するにもかかわらず、ほとんどの変異体で転写活性化能が低下または欠如していた。以上よりAML1遺伝子変異による機能消失がMDS/AMLの病因の1つであると思われ、AML1点変異が疾患単位を形成する可能性があると考えてこれらの結果を報告した。 点変異はDNA結合部位のほか、転写活性化ドメインや転写抑制に働く部位など広範囲に分布し、その結果転写調節機能異常が生じていた。この機能異常を解明するため、タグをつけた正常および変異AML1を導入した細胞株を樹立し、タグにより転写因子複合体を精製してMALDI-TOF/TOF分析装置を用いた構成蛋白の同定を行った。正常AML1により形成されたAML1複合体からは、これまでに報告されているCBFβ、ets1、p300、C/EBPα、およびGATA-1が同定された。変異AML1が形成した複合体は正常AML1複合体とは構成因子が異なっており、それぞれのAML1変異体が蛋白結合能に影響を与え、その結果AML1転写因子複合体としての機能が抑制されていることが分かった。さらに現在、それぞれの変異体と結合蛋白の直接結合能をin vitroにおいて検討している。
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