研究課題
基盤研究(C)
経時的に慢性期と急性転化時の検体を得られた成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)3症例及び、典型的慢性型ATLと典型的急性型ATLの計4ペアでの、約7000の遺伝子についてのオリゴヌクレオチドアレイにより解析した。発現に有意な差を認めた遺伝子群のうち、染色体不安定性に関わりうる遺伝子としてproteasome subunit HsN3の高発現を高悪性度ATLで同定した。この遺伝子は、HTLV-1感染細胞で高発現していることが知られている転写因子であるNFkBの発現を、HTLV-1のTaxを介して調節する。その他、発現量に有意な変化を認めた遺伝子としては、慢性型と比較して急性型ATLではribosomal proteins, translation factors, immunophilins, heat shock proteinsおよびDNA複製にかかわるhelicaseなどの遺伝子を含む203遺伝子の発現が2/4ペア以上で亢進し、HLA等の免疫関連遺伝子や増殖抑制に重要なphosphataseを含む91遺伝子の発現が2/4ペア以上で低下していた。また、発現亢進を急性期に認めた203の遺伝子には、Taxとの関連が報告されているgalectin-3などが含まれていた。アレイで発現に差を認めたいくつかの遺伝子について、これまでの研究で既にその染色体異常を同定している低悪性度ATLと高悪性度ATL細胞のRNAをもちいてreal time PCR法で解析したところ、同様の発現パターンの差を認めた。以上よりATLの多段階発癌の後期であり高頻度に付加的染色体異常を伴う急性転化時に、染色体の不安定性に関わる分裂チェックポイントなどの遺伝子群のみならず、細胞の形質転換や活性化に関わる遺伝子群の発現パターンが変化していることが明らかとなった。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Int J Cancer 109(6)
ページ: 875-881
International Journal of Cancer 109(6)