研究概要 |
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は発熱、血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害、そして動揺性精神神経症状(Moschowitzの5徴候)を、また溶血性尿毒症症候群(HUS)は、血小板減少、溶血性貧血、そして腎機能障害(Gasserの3徴候)を主徴とする全身性重篤疾患である。近年、血漿von Willebrand因子切断酵素(VWF-CP)、別名ADAMTS13、活性とこのインヒビターの測定法が確立され、TTPとHUSはこれらのマーカーにて大まかに鑑別診断が可能となり、またいずれの疾患群も先天性のものと後天性のものがある事が明らかになった。これらアッセイの基本はVWFマルチマー解析であるが、高度の技術的熟練度が必要で、私のラボはこれが可能な本邦の代表的医療機関として過去7年間に350例を超えるTTP/HUS患者血漿の解析を全国の約150施設より依頼された(現在も継続中)。この内、290例についての解析結果をまず報告し、その内訳は先天性TTP/HUSが33例、後天性TTP213例、後天性HUS44例であった(Seminar in Hematol 41:68-74,2004)。先天性TTP/HUSのうち21例はADAMTS13活性著減(<3%)を示し、最終的にUpshaw-Schulman症候群と確定診断され、うち7家系について同遺伝子解析を行い報告した(Blood 103:1305-1310,2004)。一方、IgG型の自己抗体であるADAMTS13インヒビターを有する後天性TTP4例の抗体エピトープ解析を行い、これらは全てADAMTS13のCys-rich/Spacerドメインにある事を証明した(Blood 102:3232-3237,2004)。さらにrecombinant ADAMTS13を用いてエビトープの異なる2種類のマウスモノクロナール抗体(A10とC7)を作成し、その性状と診断への利用について検討している(現在論文作成中)。
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