研究課題
基盤研究(C)
慢性腎不全によって血液透析を受けている患者では、心血管系の疾患を発症する危険性が高いことが知られている。そこで、血液透析を受けている患者の末梢血中の血管内皮前駆細胞の数と機能を検討した。血液透析を受けている患者では、末梢血のCD34陽性細胞数およびAC133陽性細胞数は、年齢を一致させた健常人に比して有意に低下していた。血管内皮前駆細胞を培養し比較したところ、形成された血管内皮細胞数とLDL取り込み能は、血液透析を受けている患者では健常人に比して有意に低下していた。VEGFは血管内皮前駆細胞を末梢血に動員するので、血清中のVEGFの濃度と末梢血中の血管内皮前駆細胞数との関係を検討したが、血液透析を受けている患者で両者に有意の関係はみられなかった。慢性腎不全で心血管系の疾患を発症する危険性が高いのは、末梢血中の血管内皮前駆細胞数の低下によることが示唆された。次に、冠動脈疾患における血管内皮前駆細胞数と諸因子との関係を多変量解析で検討したところ、糖尿病が末梢血中の血管内皮前駆細胞数の減少に関係する唯一の因子であることが判明した。大血管の動脈瘤手術後の末梢血中の血管内皮前駆細胞数の動態を検討したところ、手術後の血清中のVEGFは徐々に増加し手術7日後で最大値となり、末梢血中の血管内皮前駆細胞数は、血清VEGF値とほぼパラレルに増加し手術7日後で最大数となった。この結果から、大血管の動脈瘤手術後ではVEGFの産生が増加し、骨髄から血管内皮前駆細胞数の動員を来すと考えられた。末梢性結果疾患を有する患者の骨髄中の造血前駆細胞数をコロニー培養法を用いて検討した。ASOとBuerger病の患者の骨髄中のCFU-GMおよびBFU-Eは、健常ヒトのそれに比して有意に減少していることが判明した。この結果から、ASOはBuerger病では、骨髄中の血管内皮前駆細胞も減少していることが推測された。
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