研究概要 |
フィラデルフィア陽性慢性骨髄性白血病(Ph+CML)はその類縁疾患に慢性好中球性自血病(CNL)Ph陽性血小板増多症(Ph+ET)が存在するが表現型の違いが分子生物学的な違いによるかはまったくわかっていない。しかし、bcr-abl融合遺伝子のサブタイプの違いによりこの病型が決定されるのではないかと推測されている。P230Bcr/AblとP210Bcr/Ablでのアミノ酸の違いは180個に及ぶアミノ酸の違いでありこの配列の中にcalcium/phospholipids binding domain(CaB)、Gap-Rac domain等機能を有するdomainがある。またb3-a2タイプP210Bcr/Ablはb2-a2タイプP210Bcr/Ablより疎水性βシートペプチドを構成している25アミノ酸があり3次構造が変化することがヒト病型に変化をもたらすと考えられている。以上のことからP230Bcr/Abl、b3-a2、b2-a2タイプP210Bcr/Ablをされそれ発現したトランスジェニック(Tg)マウス作成によりその表現型の違いを明らかにすることを目的として研究した。P210Bcr/Ablはマウス表現型がPh要請血小板増多症(Ph+ET)に類似し、b3-a2タイプP210Bcr/Ablは血小板増多を伴うCMLに類似していた。b2-a2タイプP210Bcr/Ablも血小板増多を伴うCMLに類似していた。以上のことからCalB、Gap-Rac domainはCML病型特に顆粒球増殖に関与していると考えられた。P230Bcr/AblTgマウスを用いて血管抑制因子、endostatin, angiostatinの前臨床実験を試みその効果を認めBloodに報告した。STI571(グリベック)の内服薬効果もこのP230Bcr/AblTgマウスを用いて観察した。驚いたことにbcr/abl遺伝子発現亢進造血細胞が発現の消失している造血細胞に置き換わり正常に近い状態に回復していることがあきらかになった。
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