研究課題
基盤研究(C)
G-CSFを投与して骨髄から動員された末梢血幹細胞は、難治性血液疾患の治療のみならず固形腫瘍の治療および再生医療に使用されている。効率よく安全に末梢血幹細胞を採取する方法の確立を目的に、末梢血幹細胞動員の機序および末梢血幹細胞採取時の合併症の機序について研究を行った。造血幹細胞はケモカイン受容体CXCR4を発現しており、骨髄ストローマ細胞が産生するSDF-1に対するケモタキシスにより骨髄内に流入・定着する。末梢血幹細胞動員を目的にG-CSFを投与すると、骨髄内に増加する好中球から蛋白分解酵素(エラスターゼ、カテプシンG)が産生され、造血幹細胞上のCXCR4が分解・切断された。その結果造血幹細胞の遊走能が阻害された。さらに好中球由来の蛋白分解酵素によりSDF-1も分解され、骨髄内のSDF-1濃度が低下した。従来の研究結果と考え合わせ、G-CSFは造血幹細胞に直接作用するのではなく、好中球から産生される蛋白分解酵素を介してケモカイン/ケモカイン受容体、接着因子を分解し、造血幹細胞の骨髄ストローマ細胞への遊走・接着を阻害することが末梢血幹細胞動員の一因と考えられた。G-CSFによる末梢血幹細胞動員の際に血小板が減少する。しかしG-CSF過剰発現マウスの血小板数は正常であり、G-CSF投与後に何故血小板が減少するかは不明である。G-CSF投与後に脾腫を生じるが、巨脾の患者では脾での血小板抑留の亢進により血小板数が減少する。G-CSF投与により脾腫を生じ脾機能が亢進することが血小板減少の原因と考え実験を行った。マウスにG-CSFを投与するとG-CSFの容量依存性に血小板数は減少した。しかし蛍光色素で標識した血小板を輸注して血小板寿命を計測したところ、G-CSF投与マウスと対照マウスの間で血小板消失速度に差はなかった。また脾臓を摘出したマウスにG-CSFを投与すると正常マウスと同等に血小板数が減少した。以上のことよりG-CSFを投与すると脾腫を生じるが、脾機能亢進は血小板減少の原因ではないことが明らかとなった。
すべて 2005 2004 2003
すべて 雑誌論文 (16件) 図書 (1件)
American Journal of Hematology 78
ページ: 55-58
Japanese Journal of Clinical Oncology (in press)
Am J Hematol 78
Jpn J Clin Oncol (in press)
福岡大学医学紀要 31
ページ: 97-106
Journal of Clinical and Experimental Hematopathology 44
ページ: 63-66
European Journal of Haematology 72
ページ: 280-284
Med Bull Fukuoka Univ 31
J Clin Exp Hematopathol 44
Eur J Haematol 72
Journal of Clinical Investigation 111
ページ: 187-196
Experimental Hematology 31
ページ: 107-117
International Journal of Oncology 23
ページ: 965-973
J Clin Invest 111
Exp Hematol 31
ページ: 109-117
Int J Oncol 23