研究概要 |
【目的】悪性リンパ腫のリンパ節腫瘍細胞から、定常的に増殖する細胞系を樹立することが困難であり、増殖機構解析の障害となっている。今回、培養条件の工夫として、リンパ節中に存在する支持細胞をfeeder細胞とした培養系の樹立を、種々のTおよびB細胞リンパ腫細胞を使用して検討した。【方法】支持細胞株として以下の2細胞株およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を使用した。1.濾胞樹状細胞様株HK (cytokine存在下で、CD4(+)T細胞の増殖を促進させる。)2.リンパ節間葉系細胞由来株SKFLS:濾胞性リンパ腫患者のリンパ節のdish付着細胞を不死化したもの。培養は、ヒト血漿20%およびIL-2,IL-4,IL-7,IL-10,IL-15を添加したIscove変法MEMの培養液を使用した。【結果】成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL):リンパ節3例、乳線腫瘤1例、末梢血8例より、B細胞を除去後、共培養を行った。リンパ節3例では、HK上で細胞株が樹立され,うち1例が腫瘍細胞由来であった。乳線腫瘤では、SKFLS上でのみ、腫瘍細胞由来の細胞株が樹立された。末梢血腫瘍細胞8例では増殖細胞は得られなかった。末梢型T細胞性リンパ腫3例では、HK,SKFLS,HUVECいずれにおいても、一ヶ月程度継続する増殖細胞を得た。血管免疫芽球Tリンパ腫3例では、HK上で1例、HUVEC上で1例が、3ヶ月程度の増殖を認めた。支持細胞上で増殖した細胞は、非存在下では、cytokine添加でも次第に増殖が停止した。また、cytokine非存在下では、支持細胞の効果は認められなかった。【考察】種々のB細胞リンパ腫のリンパ節細胞においては、上記の3つの支持細胞での増殖促進効果は、現在まで認められなかった。以上の結果より、一部のT細胞腫瘍において、支持細胞がその増殖の維持に関与をしていることが示唆された。
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