研究概要 |
1.背景と目的 リンパ球表面抗原のひとつであるCD7分子は、一部の骨髄性白血病およびMDSにも発現し、予後因子として注目されているが、その発現調節機構については明らかではない。急性骨髄性白血病細胞においてCD7分子がどのような発現調節を受けているか、その分子機序を明らかにすることを目的とした。 2.方法 遺伝学的背景が同一であるCD7陽性ヒトAML株化培養細胞(KG-1a)とその親株であるCD7陰性株化培養細胞(KG-1)を用いて、FISH、染色体分染法、PCR-direct sequencingにより構造遺伝子の解析を行った。リアルタイムPCRを用いて、mRNAレベルでの発現解析を行った。タンパク質レベルでの発現解析にはフローサイトメトリーを用いた。また、cDNA Microarrayを用いたKG-1a細胞とKG-1細胞における遺伝子発現プロファイルの比較も行った。 3.結果 染色体分染法ではKG-1a細胞、KG-1細胞共にCD7遺伝子領域(17q25.2-25.3)の構造異常は認められず、PCR-direct sequencingによっても塩基配列レベルの構造異常は見られなかった。リアルタイムPCRによる解析では、KG-1a細胞はKG-1細胞の約260倍のコピー数のCD7mRNAを発現していることがわかった。フローサイトメトリーによる解析では、細胞表面および細胞内ともに、CD7の発現はKG-1aにのみ認められた。cDNA microarray解析では、KG-1aで発現が上昇しているものとして、NCAMI, selectinL等の接着因子やMHC class Iをコードするものが見出され、逆に発現が低下している遺伝子として、MHC class II, CD74, IGFBP-2等を構成する遺伝子群が見出された。 4.考察および今後の展開 これらの観察結果から、CD7分子の主たる発現調節段階はmRNAレベルにあると推測される。今後、転写頻度やmRNA安定性などについて、解析を進めていくとともに、cDNA microarray解析の結果を考慮し、発現変化のみられた遺伝子群とCD7遺伝子発現調節の変化との関連についても検討を加えていきたい。
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