研究概要 |
Eotaxinは好酸球に対し特異的な遁走活性を有し、気管支喘息の病態において重要な役割を担っている。またEGFは気道上皮のリモデリングに関与し、癌細胞などでGタンパク共役型レセプター(GPCR)とEGFレセプター(EGFR)間のクロストークが指摘されている。気道上皮細胞にも、Gタンパク共役型レセプターであるCCR3がmRNAレベルで発現している。平成15年度我々は、eotaxin刺激による気道上皮細胞MAPキナーゼの活性化とサイトカイン産生を検討し、その経路においてEGFRが関与していることを報告した(Biochem Biophys Res Commun 320:292-6,2004)。 平成16年度はGPCRとレセプター型チロシンキナーゼ(RTK)間のクロストークの応用として、好酸球での検討を試みた。好酸球は喘息でのエフェクター細胞である一方、近年リモデリングにおける役割が指摘されている。分離した好酸球では、ドナーによってRTKであるPDGFレセプター(PDGFR)がmRNAあるいはタンパクレベルで発現している例が認められた。 PDGFRを発現している好酸球をPDGFR阻害剤(AG1295)で前処理すると、eotaxinによるMAPキナーゼ活性化と好酸球遁走が有意に抑制されることがわかった(Int Arch Allergy Immunol 140(suppl 1):28-34,2006)。 平成17年度は喘息モデルマウスの系を用い、in vivo におけるEGFR阻害剤(AG1478)の効果を検討した。気管支洗浄液中の好酸球数は抗原吸入によって有意に増加し、AG1478の投与によって抑制された。組織学的にも抗原吸入によって誘発された炎症細胞浸潤・気道壁肥厚・気道の粘液産生は、AG1478の前投与により明らかに抑制された。喘息モデルにおいてEGFRは、炎症あるいはリモデリングの形成に重要な役割を担っていることが示唆された。 以上3年間にわたり、ケモカインによるアレルギー性の炎症・リモデリングの制御を解明した。特にeotaxinによるRTKの活性化はアレルギー病態における新しい概念であり、今後の治療戦略として応用が有望であると考えられた。
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