研究概要 |
気管支喘息をはじめとするアレルギー性疾患の発症にはTh2細胞の選択的活性化が深く関与している。そして近年の研究によりTh2細胞の分化にはIL-4によるStat6の活性化が重要であることが明らかとなった。一方我々は、肥満細胞では、蛋白分解によるStat6抑制機構が内在していることを示した(J.Exp.Med.196,27-38,2002)。本研究では、Stat6分解酵素の基質特異性及びStat6分解酵素に対する各種蛋白分解酵素阻害薬の効果を検討し、Stat6分解酵素の詳細を明らかにするとともに、レトロウイルス発現クローニング法を用いて、Stat6分解酵素の単離を目指した。その結果、1)肥満細胞の核内に存在するStat6分解酵素は、Stat6を切断するがStat5を切断せず、未分化な骨髄球系細胞(FDC-P1細胞)に存在するStat5分解酵素は、Stat5を切断するがStat6を切断しないこと、2)広範囲なセリンプロテアーゼ阻害薬であるAEBSFは、Stat6分解酵素とStat5分解酵素の両者を抑制するが、エラスターゼ特異的阻害薬であるONO-5046は、選択的にStat6分解酵素活性を抑制すること、3)Stat6分解酵素は、ONO-5046により抑制されることが示されているneutrophil elastaseやproteinase 3とは異なる部位でStat6を切断することを明らかにし、Stat6分解酵素は、エラスターゼファミリーに属する未知の酵素である可能性を示唆した。現在、レトロウィルス発現クローニング法を用いて肥満細胞のcDNAライブラリーからStat6活性化に対し抑制性に機能する遺伝子を探索中である。これによりStat6分解酵素が単離され、その機構を応用したアレルギー性疾患治療への発展が期待される。
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