マスト細胞はアレルギー反応のみならず、グラム陰性桿菌、寄生虫などの病原微生物からの生体防御に重要であることが報告されている。また近年マスト細胞は、グラム陰性桿菌LPS認識に重要なToll-like Receptor4(TLR4)を発現しており、マスト細胞はこの受容体からの情報伝達により活性化され、グラム陰性桿菌からの生体防御に重要な役割を演じていることが報告されてきている。マスト細胞は常に種々の(複数の)リガンドにより刺激されマスト細胞の活性化が制御されているのではないかと考えられ、さらにマクロファージにおいて認められている"トレランス"という現象が、マスト細胞にも認められるかどうか、また認められる場合、トレランスを引き起こす分子生物学的機序に関してはほとんど不明のままである。本研究では、マスト細胞をLPSおよびIgEという複数のリガンドで経時的に刺激し、これらの受容体刺激の相互作用を比較検討した。100ng/mlのLPSにてマスト細胞を一次刺激し、その16時間後にDNP・IgEおよびDNP・HSAにてFc・RIを介する二次刺激を行った。LPSで一次刺激を行った細胞と一次刺激を行わなかった細胞と比較すると、Fc・RIを介する二次刺激後のヒスタミンの産生はLPSで一次刺激を行った細胞で若干低下が認められたが有意ではなかった。また我々が用いたコマーシャルのDNP・IgEは、単独でDNP・HSAの添加なしにヒスタミンの産生を誘導することが判明した。従ってトレランスの有無を判別するためには、単独ではヒスタミンの遊離を来たさないIgEが必要であると考えられた。
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