(1)健常人より、好塩基球、好酸球を99%以上に純化し、IL-3R、IL-5R、GM-CSFRαの発現を検討した。mRNAの発現量は好塩基球ではIL-3Rα>IL-5Rα>GM-CSFRα、好酸球では、IL-5Rα≧GM-CSFRα>IL-3Rαの順であった。好塩基球は好酸球に比べ約100倍のIL-3RαmRNAを発現していた。好塩基球の脱顆粒、CD11b発現、アポトーシス抑制、また好酸球のCD11b発現、アポトーシス抑制に対するリガンドの作用強度は、受容体α鎖mRNAの発現量と平行していた。しかしながら、好塩基球刺激後24時間後のCD69発現は、発現量に平行せず、IL-3のみが選択的に誘導し、好酸球CD69発現もIL-3が最も強力に誘導した。 (2)好塩基球、好酸球の増殖因子の脱顆粒、CD11b発現、アポトーシス抑制に対する作用強度は受容体のα鎖の発現量と平行するが、刺激24時間後のCD69発現は発現量と平行しなかった原因が、受容体のリガンドによる刺激により、受容体の発現レベルが変化した可能性が考えられた。好酸球のIL-5Rα、GM-CSFRαの表面発現は、各々のリガンド刺激で著明に減少したが、IL-3による刺激は、IL-3Rαの発現に影響せず却って増加を誘導した。また、IL-5、GM-CSFによる刺激もIL-3Rα発現を著明に増強した。これらの増強はmRNAレベルでも認められた。以上の結果は長期間の増殖因子の刺激により受容体の発現量が変化し、IL-3Rαの発現が好酸球においても最大になる可能性を示した。近年、欧米での臨床治験で抗IL-5抗体が喘息に対し臨床効果を示さなかったことが判明し話題となったが、本研究の結果は、好酸球が組織中でIL-5の作用を受けにくい方向に変質していく可能性を示唆している点で重要と考えられる。 (3)好塩基球の血管内皮間隙遊走(transendothelial migration)初めて検討し、他の様々な細胞機能と同様、IL-3が血管内皮間隙遊走を増強することを見出した。
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