関節リウマチ(RA)の治療は、TNF-α阻害療法の導入により大きく変わりつつある。Nuclear factor-kappa B(NF-κB)はTNF-αによる細胞内シグナル伝達に重要な転写因子であり、RAをはじめとする炎症性疾患の治療ターゲットとして注目されている。NF-κBは阻害タンパクであるIκ-Bと会合した不活性型として細胞質に存在する。TNF-αなど細胞外刺激により、活性化されたIKKはIκ-Bをリン酸化することでIκ-B分解を誘導する。この結果、NF-κBは活性化され核内へ移行し、一連の標的遺伝子の転写を促進する。本研究では、新規に開発・合成された一連のNF-κB阻害剤薬の中から、抗リウマチ薬として期待される化合物を用いて解析を行った。候補化合物は、Computer-aided drug designによりIKK-β阻害薬として同定された化合物であり、最初にin vitroにおいてRA滑膜細胞のサイトカイン産生抑制(ELISA)に優れた化合物が選択された。これらの化合物はin vitroにおいてTNF-αにより誘導されるNF-κB活性やIKK活性をmicroMの濃度で抑制した。さらに、これらの化合物から、1〜3mg/kgの用量でマウスコラーゲン関節炎(CIA)マウスコラーゲン関節炎の発症を抑制するものが選択された。候補化合物のひとつであるIMD465に関して、滑膜細胞の細胞周期解析を行い、この化合物により、滑膜細胞の増殖はG0/G1期からS期への進行が抑制された。DNAアレイを用いた検討でも、細胞周期に関連した一連の遺伝子発現が抑制されていた。IMD465を含む、これらの化合物がRA治療に臨床応用されるには安全性など解明すべき点はあるが、今後の進展が期待される。
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