研究目的:関節リウマチ(RA)の腎障害は多岐にわたるが、予後的にはアミロイドーシスが最も重要である。RAに伴うアミロイドーシスの遺伝要因について、合併の早期診断や病態評価の観点から検討した。 対象と方法:アポリポ蛋白E(ApoE)の表現型、遺伝子型について、症例をかさねて検討した。すなわち、アミロイドーシス合併RA68例と合併のないRA171例の血清を用いて、等電点電気泳動法で解析した。 結果:ApoE4の陽性頻度は合併群が26.5%(18/68)、非合併群が15.2%(26/171)であり、合併群で有意に高頻度であった(p=0.043)。また、当施設で経過観察されている合併症例に限定して、ApoE4陽性RAと陰性RAとで2005年末までの転帰を比較した結果、ApoE4陽性群では15例中12例(80%)が既に死亡していたが、ApoE4陰性群では転帰不明の2例を除く40例中死亡例は20例(50%)であり、ApoE4陽性群で有意に死亡例が多かった(p=0.045)。 考案:RAアミロイドーシスの遺伝要因としては、血清アミロイドA蛋白(SAA)の遺伝子多型が最初に報告された。SAAの-13Tの遺伝子多型では重篤な消化管障害との関連が報告されているが、今回のApoE4では昨年度の報告のように腎障害との関連が示唆されている。予後については、今年度さらに症例数を増して検討した結果でもApoE4陽性例で予後不良であった。以上より、SAAの-13Tの遺伝子多型やApoE遺伝子型を検索し、合併ハイリスク例や予後不良例を早期に特定し、早めに各種対策を講じることで、RA症例の臨床経過や予後の改善が期待される。 結語:RAにおけるアミロイドーシス合併の遺伝要因としてApoE4の重要性を認め、ApoE4はアミロイドーシス合併後の腎障害の進行や生命予後とも密接に関係する要因であることも確認された。
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