世界的に気管支喘息などのアレルギー性疾患が増加しており、特に日本においてその増加率は著しい。気管支喘息に対しては多くの治療薬が開発され、吸入ステロイドを第一選択としての治療が進められているにもかかわらず、難治例は少なからず存在し、死亡率の著明な改善も認められていない。これらのアレルギー性疾患に対する新たな治療戦略が強く望まれている。我々は従来から血液凝固因子の炎症性疾患における役割に注目し、特に気管支喘息などの呼吸器領域での炎症性疾患において凝固・線溶系の因子がその病態形成に重要な役割を果たしていることを報告してきた。さらに抗凝固因子である活性化プロテインC(APC)が抗炎症作用を有することを見いだし、気管支喘息におけるAPCの臨床的意義と疾患モデルマウスでのAPCの治療効果を明らかにした。本研究ではこうしたこれまでの研究成果をふまえて、アレルギー性疾患治療薬としてのAPCの有用性をさらに明らかにするため、抗原提示細胞からのリンパ球活性化、リンパ球によるサイトカイン、IgE産生に対するAPCの抑制効果を検討した。Ovalbumin誘発気管支喘息マウスモデルにおいて、APCは樹状細胞による抗原提示、リンパ球によるIL-4、IL-5、IL-13等のTh2サイトカインの産生、好酸球の活性化を優位に抑制することが明らかになった。また、APCはB細胞のIgEへのクラススイッチに必要であるJAK-STAT6とPKC-NFκBの細胞内シグナル伝達機構の活性化も優位に抑制した。以上の結果よりAPCが喘息等のアレルギー疾患の発症に中心的な役割を果たしている樹状細胞によるリンパ球の活性化を抑制することが明らかになり、APCが新たなアレルギー性疾患の治療薬になる可能性が示唆された。
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