研究課題/領域番号 |
15591061
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
斎藤 厚 琉球大学, 大学院・医学研究科, 教授 (90039842)
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研究分担者 |
比嘉 太 琉球大学, 大学院・医学研究科, 助手 (50291555)
川上 和義 琉球大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (10253973)
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キーワード | 結核 / 高齢者 / 内因性再燃 / Th1サイトカイン / 老化促進マウス / 糖尿病 |
研究概要 |
結核菌は全世界の人口の3分の1が感染するといわれ、単一の病原微生物としては最大の感染症である。ほとんどにおいて感染は一度制御されるが、数年から数十年後免疫能の低下にともない内因性再燃によって発症する。老化は重要な発症要因の一つであり、我が国では高齢者結核の増加が問題になっている。 本研究では、高齢者における結核の発症要因について解析を行い、その内因性再燃機序を明らかにすることを目的とする。明らかな免疫低下要因のない結核患者を若年者群と高齢者群に分けて解析すると、高齢者群において血清中のIL-12及びIFN-γ値が低い傾向にあり、結核感染防御に重要なTh1免疫応答能の低下が発症機序の一つになっている可能性が推察された。このことを詳細に解析する目的で、老化促進マウス(Senescence Accelerated Mouse : SAM)を用いて肺結核症モデルを作製した。SAMはコントロールマウスに比べて40%程度平均寿命が短いといわれている(9.7ヶ月vs.16.3ヶ月)。SAM及びコントロールとしてAKR/Jマウスの肺内に約100CFUの結核菌強毒株(H37Rv)を感染させ、経時的に老化スコア、生存率、肺内生菌数、肺内結核菌DNA量、肺内サイトカイン産生能及びTh1、Th2細胞誘導能について解析を行っている。現在感染3ヶ月後の解析が進行中であり、今後は6、8、10ヶ月後に同様な解析を実施する。一方、老化にともない糖尿病が増加することが知られているが、これも結核の重要な危険因子の一つである。本研究で我々は、糖尿病の進行にとともにIL-42、IFN-γ産生が低下すること、糖尿病合併肺結核患者では非合併患者に比べ血清中のIL-12、IFN-γ値が低いことを見出した。さらに、ストレプトゾトシンを用いて膵β細胞を破壊することにより作製したマウス糖尿病モデルに結核菌を感染させ、コントロール群に比べTh1反応が有意に低下することを観察している。 これらの結果から、高齢者では種々の原因によってTh1免疫応答が低下することが発症の原因となっていることが考えられ、次年度はその詳細な機序についてさらに解析を進めていく予定である。
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