抗NR2 glutamate receptor(NMDAR2)抗体が抗DNA抗体の一部を構成しているか否か、血管内皮細胞(EC)に結合し、ECを活性化させるか否かを検討した。抗NMDAR2抗体価高値のSLE症例血清より合成peptide(DWEYSVWLSN : DWEYSはNR2 glutamate receptorのアミノ酸残基283-287に一致)カップリングSepharose HP担体カラムを用いてIgG抗NMDAR2抗体を精製した。SLE5症例の精製IgG抗NMDAR2抗体(IgG濃度40μg/mlよりの倍々希釈系列を作成)は合成ペプチド(DWEYSVWLSN)、ds-DNAにIgG濃度依存性に結合した。SLE14症例の精製IgG抗NMDAR2抗体、陰性コントロールとして5人の正常人由来精製IgG(IgG濃度20μg/mlよりの倍々希釈系列を作成)、陽性コントロールとしてIL-1β(5U/ml[17.86pg/ml])をconfluentかつ単層となったヒト臍帯静脈由来EC(HUVEC)に反応させたところ、SLE14症例の精製IgG抗NMDAR2抗体は5人の正常人由来の精製IgGに比較してIgG濃度依存性にHUVECに有意に結合し、IL-1βと同様に接着分子(ELAM-1、VCAM-1、ICAM-1)の発現及び、cytokine(IL-6、IL-8)産生も正常人5人由来の精製IgGに比較して有意に増強した。抗NMDAR2抗体は抗DNA抗体の一部を構成し、血中の抗NMDAR2抗体が中枢神経系血管のEC表面に結合し、EC活性化を誘導し、それが脳血管障害や血管炎(髄腔内への白血球浸潤、髄腔内でのcytokine濃度上昇、それに伴う自己抗体の血中から髄腔内への移行促進や髄腔内での自己抗体産生促進)に繋がり、それらの症状がCNSループスを発症させている可能性が示唆された。
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