申請者は平成15年科学研究費を用いて以下の結果を得た。免疫抑制性分子であるPD-1に対する抗体を投与した結果、SJL/Jマウスを用いた実験的自己免疫性脳炎(多発性硬化症動物モデル)では、疾患の増悪がみられた。次にそのリガンドであるPD-L1とPD-L2に対する抗体を投与したところ、PD-L1に対する抗体投与にて特に疾患の増悪がみられたことから、この系においては主にPD-L1/PD-1の系が免疫抑制性の機能を果たしていることが明らかになった。他の免疫抑制性分子であるTRAILではその抗体投与により、実験的自己免疫性脳炎は悪化したが、全身性エリテマトーデスモデルであるNZB/W F1マウスに投与したところ、疾患の軽度の増悪が観察されたが、有意ではなかった。さらにTRAIL受容体であるDR5を刺激する抗体を作製し、NZB/W F1マウスに投与したところ、軽度の自己抗体産生抑制効果しかみられなかったことから、TRAIL/TRAIL受容体システムは全身性自己免疫疾患では軽度の役割しか持たないことが示唆された。そこで臓器特異的モデルにのみにしぼり、PD-1分子やTRAIL分子を自己反応性T細胞にレトロウイルスを用いて遺伝子導入し、実験的自己免疫性脳炎または関節リウマチモデルであるコラーゲン誘導関節炎モデルに移入したところ、疾患を改善できることをみいだした。今後その作用機序をin vitroならびにin vivoの両面から解析する予定である。またこの効果が炎症局所でのものかリンパ節での免疫抑制なのかbioluminescence in vivo imagingで検討を行う。
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