マウスの個体におけるCCL20-CCR6系の役割を解析するために、CCL20の作用を阻害する実験系を計画した。そのためにまずマウスCCL20またはマウスCCR6に対する単クローン抗体をハムスターを用いて作製することを試みた。その結果CCL20に対する抗体産生細胞は得られなかったが、CCR6に対する抗体産生クローン29.2L17を得ることができた。しかしながら29.2L17はマウスCCR6に対して特異的には結合するが、CCL20の作用をブロックする作用はないことが明らかになった。 一方、サルモネラ菌のマウスへの感染実験系を作るために、経口免疫に用いる菌株、菌数、免疫期間、およびchallengeに用いる菌株と菌数などを検討し、経口免疫の効果が見られるような2次免疫応答を調べる系を構築した。その条件に基づいて免疫前後、challenge後の各時間において腸管、肝臓および脾臓を採取し、凍結標本およびホルマリン固定標本を作製した。現在サルモネラ菌感染局所におけるCCR6およびCCL20の発現と免疫担当細胞の増減をRT-PCRおよび免疫組織化学染色により解析中である。 本研究は主にサルモネラ菌感染系における腸管でのCCR6およびCCL20の役割を調べることだが、さらに広く微生物感染に対する生体防御におけるCCR6-CCL20系の役割を調べるために、我々はマウスの角膜組織でのCCL20産生とCCR6発現細胞の分布をRT-PCRと免疫組織化学法によって解析した。その結果、角膜組織においては角膜上皮のみならず角膜実質細胞でも炎症性サイトカインなどの刺激でCCL20を産生することが明らかとなった。また、産生されたCCL20が炎症の起きている角膜組織に樹状細胞などのCCR6発現細胞を引き寄せることを単純ヘルペスI型の感染モデルで確認した。
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