研究分担者 |
原田 保 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30165021)
大内 正信 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80107185)
春間 賢 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40156526)
武田 昌治 川崎医科大学, 医学部, 講師 (10227035)
秋定 健 川崎医科大学, 医学部, 助教授 (00212423)
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研究概要 |
【目的】15年度は経鼻ワクチンにおけるアデノイド組織の,M細胞の機能形態を明らかにする目的で,まずインフルエンザウイルスとの関係を検討した。鼻咽喉リンパ組織(NALT)におけるウイルス感染でのM細胞の役割に関しては,まだ,不明なことが多い。本研究では,ヒトのアデノイド組織でのインフルエンザウイルスの侵入過程とインフルエンザウイルスレセプターの分布を電子顕微鏡並びに免疫組織学的に検討した。【方法】川崎医科大学附属病院で行われた3才から9才までの5症例の慢性炎症によるアデノイド摘出標本を用いた。A型インフルエンザウイルス(MRC11,H3N2亜型)を10日齢の発育鶏卵漿尿膜腔で2日間増殖させ,その漿尿液からウイルスを回収した。アデノイド組織をウイルスの入った培養液で60-90分間器官培養し,電子顕微鏡で観察した。また,アデノイド組織上におけるインフルエンザウイルスレセプター,NbuAcα2,6Galシアロ糖鎖特異的レクチン,Sambusus nigra bark(SNA)を用いて組織化学的に検討した。【結果】インフルエンザウイルスとアデノイド組織の器官培養30分後の透過電顕観察ではM細胞の管腔側表面にウイルス粒子を多数認めた。60分後の透過電顕では、ウイルス粒子はM細胞の微絨毛表面と細胞質のphagosomeの中に認められた。それぞれのウイルス粒子を拡大観察すると,ウイルスの表面には明らかなスパイクを認めた。また,60分後,M細胞に内包されたリンパ球様細胞の細胞質のsmall vesicle内にウイルス粒子が認められた。ウイルスレセプターの検討ではSNAレクチンは重層柱形上皮のみならず,リンパ濾胞被覆上皮に存在するM細胞の管腔側表面やphagosome内にも存在していた。【結論】アデノイド組織のM細胞はインフルエンザウイルスの大きな侵入門戸の一つで,M細胞におけるインフルエンザウイルスの侵入機序には,シアロ糖鎖レセプターを介したM細胞への付着とM細胞自身の活発な貪食力が関与するものと考えられた。
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