変異PML-RARαを獲得したATRA耐性のAPL細胞株(UF-1)を用いて、ATRA感受性における変異PML-RARαの役割とそのATRA応答性を検討した。さらに新規合成レチノイドAm80の効果も検討した。 [結果]UF-1細胞は低濃度のATRAでは効果ないが1μM ATRAに対しては分化とアポトーシスを起こした。変異PML/RARα(Arg611Trp)のATRA刺激転写活性は低下し、かつ正常RARαに対するドミナントネガティブ作用は増強した。RT-PCRではUF-1のPML/RARα及びRARα発現はATRA刺激の有無にかかわらず一定であったが、RARβ発現は1μM ATRA刺激により誘導された。Western blotにおいてもUF-1の変異PML/RARαはATRA及びAm80培養で発現量はほぼ一定であったのに対し、正常RARαは1μMのATRA及びAm80刺激により発現が増加した。一方RARβ蛋白は1μM ATRAのみで発現が増加し、1μM Am80で発現の増加はなかった。 [考察]Arg611Trp変異はPML/RARαのRA刺激転写活性を低下させ、正常RARαに対するドミナントネガティブ作用を増強し、UF-1細胞のATRA感受性を低下させていることが示唆された。Am80のUF-1に対する作用は、RARβへも作用するATRAに比較して終末分化とアポトーシスが少ないこと、RARβがATRAにより誘導されたことから、RARβの発現が終末分化とアポトーシスの誘導に関わる可能性が示された。さらにUF-1が変異PML/RARαを発現しながら、1μM ATRAに対する感受性を回復したメカニズムは、変異PML/RARαに比べ正常RARα蛋白発現が相対的に増加したことより、変異PML/RARαのドミナントネガティブ作用が減少し正常RARα機能が回復した可能性が示唆された。
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