研究概要 |
まず(1)Kuの分解とそれによるアポトーシス誘導について検討を加えた。まず膵臓のacinar cell lineを用いた検討では、酸化ストレスによりKuのdegradationが誘導され、細胞がアポトーシスに陥ることでKuの過剰発現によってこれを抑えることが明らかになった(J. Biol Chem.278:36676-36687,2003)。この分解にはセリンプロテアーゼが関与するが、さらにNF-kBも関与しているらしいという証左をうかんでいる。ヒト休止期B細胞でも同様の現象が観察されつつある。ドミナントネガティブKu分子を細胞に導入した際に、そのまま細胞死を起こすものと、刺激が加わって初めて細胞死が顕著になるものがある。細胞死を起こさなかったものについては、以後の形質変化が起きる可能性もあり、これらの関係をさらに詳細につめる準備が整った。 また(2)TCF1との会合についての検討では、TCF1をFLAG-TCP1として組換えタンパクを作成することを試みたが、収率が悪く、現在His-TCF1のシステムで再検討中である。Ku70,Ku80についてはそれぞれ7,8領域に分けて発現させることが可能なため、His-TFC1発現系が完成次第、その会合様式が明らかになると期待できる。またKuのリン酸化とTCF1との会合の関係についても検討が可能な状況になっている。 さらに(3)B細胞系での検討を容易にするために、樹状細胞株を用いたB細胞の長期培養系の確立を試みている、Fcレセプターを有する樹状細胞にCD40抗体をまぶし、さらにIL-4を添加して増殖を試みる方法である。これが完成すればB細胞へのクラススイッチ誘導、IgE産生に対するKuの作用をより詳細に検討できるものと期待している。
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