1.先天性甲状腺機能低下症(CH)ラットの作成と甲状腺機能変化: 2頭の妊娠SDラットを0.02% methylmercaptoimidazo 1(MMZ)を含む飲水で飼育し、CHラットを作成した。対照群2頭より生まれたラットとともに1年間飼育し、甲状腺ホルモン測定を行ったが甲状腺機能は既に回復していた。すなわち母体に加わった甲状腺障害機序(薬物、抗体など)によるCHでは無治療でも甲状腺機能の回復が認められる。 2.CHラットへの甲状腺ホルモン(L-thyroxine、LT4)投与がその後の甲状腺および他臓器に与える影響: 正常新生SDラットからオスだけを選び、生後3週からLT4を含飲料水(0.2g/L)で飼育した。8ヶ月後、と殺し腎臓組織の観察を行ったがLT4投与群と対照群の間に有意の組織変化はなかった。また腎組織をコンピューター画像化して1000個の糸球体の大きさを専用計算ソフトを用いて測定した。その結果LT4投与群と対照群に有意差はなかった。すなわち新生児期から中毒量に近い超大量のLT4を投与しても腎糸球体に対する影響はないとの結論が得られた。 3.甲状腺組織所見の検討: 上記1で飼育したラットの甲状腺と腎臓を摘出した。現在、専門家により組織標本作製中であるが結果の解析は次年度に持ち越さざるを得なかった。 4.臨床研究: ボーダーラインCHとして新生児期からLT4投与を行った患者の中止後の甲状腺機能を検討したところ、甲状腺ホルモン分泌に異常は認められなかった。次年度(最終年度)ではさらに多くの臨床症倒について負荷テストを含めた検討を行い、結論を出したい。 これまでに得られた成績のまとめ: 現在問題になっているボーダーライン先天性甲状腺機能低下症の患者に新生児期から甲状腺ホルモン補充療法を継続的に行っても、投与された甲状腺ホルモン自体による中長期的な甲状腺および他臓器への悪影響はないと推測される。
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