研究概要 |
全国あるいは世界中から無ガンマグロブリン血症を中心とする先天性免疫不全症の診断依頼を受け、フローサイトメトリーならびに遺伝子解析によって多数例の診断を行った。XLAは本来男性にしか発症しないが、X染色体の不活化の異常な偏りによって、遺伝学的には保因者でありながら臨床的に無ガンマグロブリン血症を発症した女性患者を同定し、世界第一例目として報告した(Blood 103:185,2004)。韓国の重症複合免疫不全症の患者の遺伝子診断を行う機会を得て、東洋人で初めてのIL-7Rα鎖欠損症(Int J Hematol 80:332,2004)と韓国で初めてのγc鎖欠損症(J Korean Med Sci 19:123,2004)を同定した。またわが国のXLAの臨床診断に関する検討を行い、非典型例が少なからず認められることを明らかにした(日児誌108:1118,2004)。 B細胞欠損の無ガンマグロブリン血症の男性患者の約90%は年齢を問わず、XLAであるが、残りの約10%は常染色体劣性無ガンマグロブリン血症の可能性が考えられる。これまで責任遺伝子として報告されているμ重鎖、λ5、Igα、BLNK遺伝子解析を行ったが、わが国ではそれらの遺伝子変異例はまだ同定されていない。XLAの骨髄ではプロB細胞からプレB-1a細胞への分化障害が示されているが、非XLAの無ガンマグロブリン血症患者の骨髄B細胞について解析した。非XLAではXLAと同様にプロB細胞からプレB-1a細胞への分化障害が認められる患者もいれば、プロB細胞以前に分化障害を認める患者もいた。うち1例はプレB1-b細胞からプレB2細胞への分化障害を認めた。Igα欠損マウスでの骨髄プロファイルに類似していたため、Igα遺伝子解析を行ったが、変異は同定できなかった。特異なB細胞分化障害を来しており何らかの遺伝子変異に基づくものと想定され、今後も解析を続ける。まだ解析した症例が少ないが、B細胞の分化障害はさまざまなメカニズムで生じていると考察される。
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