(1)生後5週齢のルイスラットにモルモットの中枢神経組織から抽出した髄鞘塩基性蛋白5μgをフロイント完全アジュバントと共に尾根部に感作した。この脳脊髄炎モデルは感作後12-15日目に下肢の完全麻痺をきたし、腰髄レベルを中心に白質および一部は灰白質にまでおよぶ単核細胞を主とする細胞浸潤をきたすことが病理学的検索で判明した。脊髄炎は一過性であり感作後18-20日目には完全に回復し、病理学的にも炎症が消失した。(2)生後5週齢のSJL/Jマウスの脳内にBeAn8386株タイラー脳脊髄炎ウイルスを接種した。この脳脊髄炎モデルは接種後25-30日目に下肢の不全麻痺を発症し、序々に進行性の麻痺をきたした。病理組織所見では腰髄レベルを中心に白質の脱髄を伴う炎症がみられた。(3)生後12週齢のNODマウスに髄鞘オリゴデンドロサイト糖蛋白の脳炎起炎ペプチドである35-55をフロイント完全アジュバントと共に尾根部に感作した。この脳脊髄炎モデルは感作後12-15日目に下肢の不全麻痺を発症し、20-30日目に寛解して完全に治癒し、その後50-80日目にかけて下肢および上肢の不全あるいは完全麻痺をきたした。病理組織所見では第1回発症時には腰髄レベルを中心に単核細胞を主とする細胞浸潤がみられ、寛解期には正常所見に戻り、再発時には視神経炎を伴う脱髄性の炎症がみられた。このようにルイスラットでは急性一過性の脳脊髄炎、SJL/Jマウスでは慢性進行性の脳脊髄炎、NODマウスでは再発寛解型の脳脊髄炎モデル動物が作成できた。来年度はこれらのモデル動物に神経幹細胞の移植実験を行う予定である。
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