研究の背景:ヒト骨髄細胞中には血液幹細胞のほかにmesenchymal stem cell(MSC)と呼ばれる間葉系の幹細胞が存在し、in vitroの培養系で骨細胞や軟骨細胞に分化することが知られている。臍帯血中にもMSCが含まれており、臍帯血由来のMSCは成人骨髄由来のMSCと比較して、より分化能や増殖能に富む可能性が考えられる。今回、臍帯血移植後の生体内におけるMSCの分化、増殖能を検討した。 1)ドナー(臍帯血)由来骨及び軟骨細胞の同定 家族性血球貪食症候群の乳児例に臍帯血移植を施行し、頭蓋骨の骨融解像を認めたため骨及び軟骨生検を施行し、その組織中のドナー(臍帯血)MSC由来細胞の同定を行なった。結果は染色体20上のG08062を標的としたPCR法にてドナー由来細胞を70%認め、mixed chimerismの状態を確認した。更に細胞のlineage別にchimerism検索を行うため、病理組織にて細胞起源を確認した後、マイクロデイッセクション法を用いて単一細胞を採取し、DNAを抽出し、同様にPCR法を行ない解析を進めたがsingle cell PCR法では細胞起原の同定はできなかった。 2)ドナー(臍帯血)由来骨髄細胞の同定 HLA2座不一致の臍帯血移植を施行したバーキットリンパ腫症例の骨髄組織でのドナー(臍帯血)MSC由来細胞の同定を染色体18、20、22番のマイクロサテライトDNAを用い、short tandem repeat(STR)によるPCR法とドナーとレシーピエントの異なるHLA型の両者を用いてmicrochimerismの検索及び造血細胞のlineage別にchimerism検索を行う準備をした。移植後GVHDは発症せず、残念ながら骨髄にてリンパ腫細胞の再発を認め、レシーピエント由来細胞が100%という結果となった。
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