今回、クローニングの対象としていたのは当科で経験し、またその白血病細胞の細胞株を当科で保有する1;9転座を有する急性巨核芽球性白血病(AMKL、急性骨髄性白血病(AML)のM7)の児の腫瘍細胞であるが、最近我々はこれとは別に15;17転座を有するAMLの一男児例を経験した。非常に興味深いのは、この症例における転座切断点は通常、急性前骨髄性白血病(APL、AMLのM3)に多数認められるPML/RARAとして知られるキメラ遺伝子が生じる部位とは全く異なっており、15q13と17q11であったことである。実際、この症例の腫瘍細胞は形態学的にはM2の芽球の像を呈しており、診断にも苦慮した。また、先の自験例M7症例と同様に、複雑で予後不良の臨床経過をとった。すみやかに初回寛解導入に成功し、以後は順調に強化療法を重ねて一旦治療終了となったものの、その直後に再発し、再寛解導入は不能で、非寛解状態で同種骨髄移植を施行した。移植後、約1ヶ月で再々発した。我々はこの症例についても未知のキメラ遺伝子を同定し得ないか、と考え、本年度はこの患児より得た白血病細胞からもゲノムDNAを抽出し、白血病細胞のゲノムライブラリーを作成した。今後、これを基にした小児自血病の客観的な分子診断の方法や、治療の標的分子の発見、さらに何故このような治療抵抗性の性質を有したかを、先のM7症例の解析と併行して明らかにする予定である。
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