非血縁者間骨髄移植後、出血性膀胱炎から腎不全・多臓器不全で亡くなった症例を経験した。この例の血液・尿を用い、後方視的にReal-time PCRによりアデノウイルスDNA定量したところ、尿中アデノウイルス量増加ののち血中アデノウイルス量の増加がみられ、病勢とアデノウイルスDNA量が相関していることが明らかとなった。この例は重度の急性GVHDを伴っており、それに対してステロイドパルス療法を用いたが、その後アデノウイルスDNA量の増加を認めた。また、多臓器不全として閉塞性肝障害を伴ったが、GVHDによる肝障害との鑑別は臨床上困難であった。 呼吸不全を伴う重症肺炎に合併した血球貪食症候群の患者を経験した。血清抗体価では病原体を確定できなかったが、肺生検組織を用いたアデノウイルスDNA定量により、アデノウイルス肺炎と確定し得た。 7人の造血幹細胞移植患者の血中・尿中のアデノウイルスDNA量を後方視的に経時的に定量した。ウイルス定量により、このうち3人が播種性アデノウイルス感染症と確定診断し得た。これらの患者はいずれも、移植後1-2週で尿中アデノウイルスDNAが陽性となり、4-6週で血中ウイルス量10^5コピー/ml以上となった。移植前に血中アデノウイルスDNAを定量できた5人の患者のうち2人が10^3コピー/ml以上を示したが、この2人はいずれもその後播種性感染を引き起こした。 以上より、尿中と血中のアデノウイルスDNA定量は播種性アデノウイルス感染症の早期診断に有用であり、移植前の血中アデノウイルス陽性例や、尿中アデノウイルスが陽性となった例は播種性アデノウイルス感染症の高危険群であることが明らかになった。また、血液・尿以外でも組織を用いた定量PCRで、アデノウイルス肺炎などの確定診断が可能であることが明らかとなった。
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