研究概要 |
骨髄異形成症候群の患者に対し、HLA6/6一致の非血縁者から骨髄移植を行ったところ、重度の急性移植片対宿主反応(aGVHD)(GradeIII、皮膚Satge3、肝臓Stage2、腸管Stage3)とThrombotic microangiopathy(TMA)を発症した。ステロイド投与にてaGVHD症状は軽減し、肝臓の生検にてタクロリムスによると考えられる重度の胆汁鬱待と肝細胞障害の所見があったためタクロリムスを中止したところ、aGVHDの急性増悪をまねいた。ステロイドパルス療法とインフリキシマブ投与により皮膚のaGVHDは軽快したが、蛋白漏出性の重度の下痢と発熱をきたした。便のアデノウイルス迅速検査(免疫クロマトグラフィー)では抗原陽性にであった。血清と尿からPCRによるアデノウイルス検出を試みたが、従来用いていたPCRプライマー並びに定量PCRのプライマーではアデノウイルスDNAを検出できなかった。しかし、アデノウイルス7型特異的プライマーを用いたPCRでは陽性であり、PCR産物のDNA配列がアデノウイルスhexon/fiber遺伝子に近似したことよりアデノウイルス感染と確定した。これにより検出されたアデノウイルスは9箇所の塩基置換が生じており、このため従来のプライマーでは検出不能であったと考えられた。ステロイドの減量とシドフォビル1mg/kg,3回/週の投与でアデノウイルス感染症は軽快した。 PCRによるアデノウイルスDNA定量は播種性アデノウイルス感染症の早期診断に有用であるが、アデノウイルスは変異を生じることが多く、プライマーの種類によってはアデノウイルス感染症であっても検出できないことがあり、PCR診断には注意を要する。
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