研究概要 |
本研究では、志賀毒素(Stx)産生型腸管出血性大腸菌感染による溶血性尿毒性症候群(HUS)に伴う急性脳症(HUS脳症)の発症機序に関する基礎的研究を、大脳毛細血管内皮細胞による血液・脳関門モデルを用いて行う。 (目的) (1)Stx刺激による培養大脳毛細血管内皮細胞でのIL-8,MCP-1などのケモカイン発現と、ケモカインが白血球付着・移行能やGb3発現能に与える影響を検討する。 (2)同細胞培養系で、抗IL-8抗体、抗MCP-1抗体の抗ケモカイン抗体を用いて、白血球付着・移行能やGb3発現能とStxの関与を検討する。 (3)Stxがケモカイン発現に関与する転写因子NF-κBに与える影響を検討する。 準備段階での血液・脳関門細胞モデルとして、臍帯静脈血管内皮細胞の培養系を確立し、Stx刺激でのIL-8、MCP-1などのケモカインを誘導することを培養液の測定で、ケモカインの上昇を確認した。ケモカインが白血球付着・移行能やGb3発現能に与える影響を今年度も現在検討中である。 また、Stx刺激有無で培養した細胞からtotal RNAを抽出し、IL-8,MCP-1でのノーザンブロット法を行い、有意な発現の確認を行った。抗IL-8抗体、抗MCP-1抗体の抗ケモカイン抗体を用いた実験を現在継続中である。 Stx刺激による転写因子NF-κB活性化についても検討中である。本来のモデルである大脳毛細血管内皮細胞の取得が今年度も難しく、関連機関、企業と交渉している。3年間で研究課題に対する有意な実験データはまだ導きだされていない。
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