研究概要 |
1 早期産児臍帯血の血管内皮前駆細胞の生物学的特性 早期産、正期臍帯血および成人骨髄の血管内皮前駆細胞(EPC)を含むと考えられる分画の割合を検討するため、早期産児、成熟児臍帯血および骨髄中のCD34、CD133、VEGFR2、陽性細胞の割合を35週未満16例、35週以後18例の臍帯血を用い検討した。 表面抗原の検討ではEPCと考えられるCD133(+)VEGFR2(+)細胞は有意に35週未満の臍帯血に多く含まれていた(p<0.05)。次にFibronectin coated dishの培養系でEPCを反映すると考えられるattached cellの割合を検討した。培養7日目で35週前では平均118個/cm^2のattached cell clusterがみられたのに対し、35週以後では52個/cm^2と培養系での検討でも35週前の臍帯血にEPCが多く含まれると考えられた(p<0.05)。つぎに、現在成人においてはEPCの骨髄から末梢血中への動員にはVEGFやPIGF、KITリガンドのSCF、CXCR4リガントのSDF-1αが関与することが知られており、今回ELISA法を用い臍帯血のVEGF濃度を測定した。VEGF濃度は35週前(n15)が38±37pg/ml、35週以後(n13)が23±26pg/mlに有意差は認めなかった。 今後PIGF、SCF、SDF-1αの測定を行うと共に早期産児臍帯血におけるCD133(+)VEGFR2(+)細胞のKIT、CXCR4の発現について検討する。 2 臍帯血中のリンパ管内皮前駆細胞の存在 受容体型チロシンキナーゼVEGFR3(Flt4)はそのリガンドのVEGF-Cとともにリンパ管新生に関与すると考えられている。このため本研究では臍帯血にリンパ管内皮前駆細胞が存在するか検討するため、前駆細胞が含まれている可能性の高いCD34、VEGFR3陽性細胞分画の割合をヘルシンキ大Alitalo教授より供与されたVEGFR3抗体を用い35週前後の臍帯血で検討した。CD34陽性細胞は35週前後の臍帯血とも約1%で有意差を認めなかったが、CD34陽性細胞中のVEGFR3陽性細胞の割合は35週前の臍帯血で50±18%、35週以降の臍帯血で22±7%と有意に35週前の臍帯血に多く含まれていた(p<0.05)。これらの研究成果はThe 8th congress of the European Hematology Association (Lyon, June 13,2003)およびKEYSTONE SYMPOSIA (Colorado, March 8,2004)において発表した。
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