ヒトの先天性副腎リポイド過形成症のマウスモデルであるStARノックアウトマウスの副腎皮質および性腺のステロイドホルモン産生細胞には多量の脂肪が沈着する。本研究における本年度の目的はこの脂肪沈着の由来を明らかにすることである。 1 マウス血中の主要なコレステロールであるHDL-コレステロールの輸送担体である Apolipoprotein A-1(以下Apo A1)ノックアウトマウスと、われわれが既に作成したStARノックアウトマウスとを交配し、Apo A1/StARダブルノックアウトマウス(以下ダブルノックアウト)を作成した。ダブルノックアウトの血中コレステロールはwild typeの1/5以下であることを確認した。 2 StARノックアウトマウス(以下ノックアウト)およびダブルノックアウトに内科的治療を行い、長期生存に成功した。 3 wild type、ノックアウトおよびダブルノックアウトを経時的に屠殺し、oil red O染色を用いた組織学的解析を行った。 (1)新生児期:副腎皮質の脂肪沈着はノックアウト>>ダブルノックアウト>wild typeの順であった。雄精巣間質の脂肪沈着はノックアウト>>ダブルノックアウト>wild typeの順であった。雌卵巣間質の脂肪沈着はノックアウト、ダブルノックアウト、wild typeのいずれにおいても認められなかった。 (2)8週齢:雄精巣間質および雌卵巣間質の脂肪沈着はいずれもノックアウト>>ダブルノックアウト>wild typeの順であった。 以上の成績は、StARノックアウトマウスの副腎皮質および性腺のステロイドホルモン産生細胞における主要な脂肪沈着の由来は血中HDL-コレステロールであることを示す。ヒトの先天性副腎リポイド過形成症において、血中コレステロールを低下させる内科的治療が、副腎皮質および性腺のステロイドホルモン産生細胞における脂肪沈着を予防する可能性がある。
|