研究概要 |
最近、初期の下垂体の分化・増殖には様々な転写因子が関与していることが報告され、複数の転写因子がクローニングされることによりヒトの先天性下垂体機能低下症あるいは下垂体機能低下症を伴う奇形症候群などの原因遺伝子が明らかとなってきている. 今回我々は,下垂体形成不全を示し、中枢性尿崩症を伴う先天性汎下垂体機能低下症の兄弟例に対して候補遺伝子の解析を行った.まず,両親よりインフォームド・コンセントを得た後に、対象者より静脈血を採取し、末梢血白血求よりgenomic DNAを抽出。転写因子LHX4,PTX1,PTX2,HESX1,BRN2のそれぞれのexon-intron boundaryも含む各exon領域を増幅できるように3.6組の特異的primerを作成し、PCRを施行。これらのPCR産物に対してGeneGel Excel Kit (Pharmacia Biotech)を用いてSSCPを行い,検討を加えた.しかし,LHX4,PTX1,PTX2,HESX1,BRN2のいずれのPCR産物に対しても異常バンドは認められなかった.現在神経外胚葉由来の間脳の発生に関与する転写調節因子Trf1や発生過程における間脳からの分泌蛋白BMP4やEGF8の遺伝子に異常が存在するか否かPCR-SSCP、DNA sequencingを行い検討中である.更に,最近間脳-下垂体系の形成に重要であることが判明したSOX3についても検討を加えていく.また,既存の転写因子のいずれにも異常が認められなければ,下垂体に特異的に発現していると考えられる病因遺伝子のmappingおよびpositional cloningを行い,遺伝子異常の有無の解析も進めていく予定である.
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