研究概要 |
我々は初年度に下垂体形成不全を示し、中枢性尿崩症を伴う先天性汎下垂体機能低下症の兄弟例に対して候補遺伝子と考えられるLHX3,4,PTX1,PTX2,HESX1,BRN2の遺伝子解析を施行した。しかし、明らかな遺伝子異常は認められなかった。そこで次年度は、新たな候補遺伝子の可能性を有するものとして神経外胚葉由来の間脳の発生に関与する転写調節因子Trf1や発生過程における間脳からの分泌蛋白であるBMP4やEGF8に着目し、それぞれの遺伝子解析をPCR-SSCP法やDNA sequencing法を用いて施行したが、遺伝子変異は同定されなかった。更に最近、転写因子であるSOX3(Xq26.3に局在)が視床下部-下垂体の形成に必須であることがNature Genetics(36(3),247-255,2004)に報告されたため、SOX3(single exon)の遺伝子解析も施行した。しかし、遺伝子異常は見い出されなかった。以上これまでの検討から、本疾患の病因は既知の下垂体転写因子の遺伝子異常ではなく、初期の段階で下垂体の発生・分化に関与する未知の遺伝子の異常による可能性が推測された。そこで、次のstrategyとして我々は新たな候補遺伝子のphysical mappingに着手した。我々の有する先天性汎下垂体機能低下症の1家系は遺伝子形式として伴性劣性遺伝形式をとる可能性が強いと考えられるため、X染色体に着目。更に2002年にSolomonらはX-linked下垂体機能低下症に関連する遺伝子がXq26.1-q27.3に存在する可能性を示唆している(Genomics)。そこで、現在この領域に局在するmicrosatellite markerを多数用いてPCRを施行後、Autosequencerを用いたlinkage analysisを試みている。現時点では良いlod scoreが認められる領域は同定されておらず、linkage analysisを継続中である。
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