研究課題
基盤研究(C)
全身性ループスエリテマトーデス(SLE)の病因に、染色体上に多数存在しているヒト内在性レトロウイルス(HERV)の遺伝子産物が自己抗原として関与する可能性が以前から指摘されている。我々はHERVが原発性糸球体腎炎の病因である可能性を検討する課程で、マウス内在性レトロウイルスenv遺伝子産物gp70に対するマウス自己抗体が一部のヒトIgA腎症の糸球体組織に顆粒状の沈着物を染め出す事実を発見してきた。この抗gp70自己抗体が認識する抗原構造を決定するマウスレトロウイルスenv遺伝子断片をプローブとして健常人とIgA腎症患者ゲノムDNAのSouthern blotting解析を行ない、多形性を示す少数のバンドを認めた。ゲノムDNAからファージライブラリを構築し、Southern blotting解析で検出された遺云子をクローニングし、625アミノ酸から成る完全型新規内在性レトロウイルスenv遺伝子産物をコードするopen reading frame(ORF)を有する塩基配列を同定した。このORFを発現する組換えワクシニアウイルスを作製し、サルCV-1細胞に感染させるシステムを確立した。ヒトSLEの発症にも「抗マウスgp70自己抗体が反応する自己抗原」と推測される新規内在性レトロウイルスenv遺伝子産物が関与するか否かをCV-1細胞に発現させた新規env遺伝子産物とSLE患者血清との反応性を指標として検討したが、多くの偽陽性例を認めた。一方で、抗gp70自己抗体によりループス腎炎腎生検組織を染色し、約10%の例において顆粒状沈着物の存在を明らかにした。さらに、患者DNAでの上記の新規env遺伝子の発現を検討し、ほとんど全ての患者でその発現を認めている。
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