研究課題
基盤研究(C)
男子遅発性オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症について遺伝疫学、発症予防の観点から研究を行い、以下の結果を得た。1.男子遅発性OTC欠損症10家系14名のOTC遺伝子解析を行った結果、R40H(7家系10名)、Y55D(2家系3名)、R277W(1家系2名)を同定した。2.Y55D、R277Wについては検索できた家系では、すべて母からこどもに伝達していた。いっぽうR40Hについては新生変異による患者の頻度は最高でも12%をこえないこと、また遺伝例では母→こども伝達が10組に対して父→娘伝達は3組にすぎなかった。これにはヘミ接合体男子のreproductive lossがヘテロ接合体女子よりも高いことの関与が推定された。またヘテロ接合体女子中、2例が発症、本変異のヘテロ接合体女子は必ずしも予後がよいとは言えないことも明らかになった。3.上記3種類の変異を簡便に検出する方法の開発を検討した。まずPCR産物のTm値の差異に基づく変異検出方法を検討したが再現性に乏しいため、2塩基ミスマッチ法による3種の変異を同時の検出するマルチプレックスPCRの条件を検討中である。4.平行して実施した新生児発症男児3例での遺伝子解析の結果では遅発例と対照的に家系ごとに異なる新奇の変異が同定された。5.遅発型男子OTC欠損症の生命予後の検討の結果、血液中のリジン他の8種のアミノ酸の濃度が予後因子として有意であると判定された。6.R40H変異を持つ男子患者の経過の分析によって、早期診断早期の特異的治療の開始によって生命予後が改善できる可能性が示された。
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