研究概要 |
1.新生児仮死モデルにおける行動評価 生後7日目のSDラットを用いて新生児仮死モデル(n:15)を作成した。Morris水迷路試験を用いて、水面下のプラットホームに達するまでの遊泳時間、遊泳距離を日齢28日目から5日間連続で測定し学習能力を評価し、さらにラット用踏み車を用いて運動能力を評価した。同日齢の対照群(n:15)と比較検討したところ、仮死群では遊泳時間、遊泳距離の明らかな延長が見られた。一方、運動能力には両群問に差がなく、遊泳時間の延長が空間学習能力の低下によることが明らかとなった。 2.組織学的解析及び生化学的解析 (1)組織学的解析:行動評価終了後に大脳組織を摘出して、大脳皮質梗塞面積、海馬CA1領域の神経細胞密度を測定し行動評価法の結果との関係を検討したが,有意な相関を認めなかった。行動障害は,特定領域ではなく複数領域を結ぶネットワークの障害が原因と推測された。 (2)生化学的解析:免疫組織学的手法、ウエスタンブロッティング法によりCaspase3陽性細胞が、負荷後16時間から24時間にピークとなって出現することを確認した。 3.薬物治療の効果に関する解析 Caspase阻害物質(BAF)100mMを、低酸素負荷前(BAF-1群:n=15)、低酸素負荷前及び負荷後12時間後(BAF-2群:n=5)にラット腹腔内へ投与した。生後28日目に行動評価を行ったが,未治療群との間に学習能力に差を認めなかった。 4.本研究のまとめと今後の課題 一側大脳半球への低酸素性虚血負荷により、学習障害ラットを作成した。本モデルはヒト新生児の片側大脳半球梗塞例と同様に運動能力障害を持たず、空間学習能力の障害を認めた。Caspase阻害物質による治療効果は見られず,今後、投与経路や他の薬剤による効果について研究を進める必要があると考えられた。
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