研究概要 |
1.新生児仮死モデルにおける行動評価 生後7日目のSDラットを用いて新生児仮死モデル(n:15)を作成した。Morris水迷路試験を用いて、水面下のプラットホームに達するまでの遊泳時間、遊泳距離を日齢35日目から4日間連続で測定し学習能力を評価し、さらにロタロッドを用いて運動能力を評価した。sham手術を受けた対照群(n:15)と比較検討したところ、仮死群では遊泳時間、遊泳距離の明らかな延長が見られた。一方、運動能力には両群間に差がなく、遊泳時間の延長が空間学習能の低下によると推測された。 2.組織学的解析及び生化学的解析 1)組織学的解析:行動評価終了後に大脳組織を摘出して、大脳皮質梗塞面積、海馬CA1領域の神経細胞密度を測定し行動評価法の結果との関係を検討したが,有意な相関を認めなかった。行動障害は,特定領域ではなく複数領域を結ぶネットワークの障害が原因と推測された。 2)生化学的解析:負荷後24時間Caspase3活性を測定したところ、対照群では左右の大脳半球で差を認めなかったが、仮死群では障害側半球で有意に活性が上昇していた。 3.薬物治療の効果に関する解析 Casepase阻害物質(BAF)100mMを、低酸素負荷前(BAF-1群:n=15)、低酸素負荷前及び負荷後12時間後(8AF-2群:n=5)にラット脳内へ投与した。生後28日目に行動評価を行ったが,未治療群との間に差を認めなかった。 4.本研究のまとめと今後の課題 一側大脳半球への低酸素性虚血負荷により、行動障害ラットを作成した。本モデルはに運動能力障害を持たず、空間学習能力の障害を認めた。Casepase阻害物質による治療効果は見られず,今後、投与時期や他の薬剤について研究を進める必要があると考えられた。また、生後5日目のラット脳に6-OHDAを投与して、ADHDモデルを作成し、本仮死モデルとの差異を検討していきたい。
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