胎仔脳は低酸素に対して非常に強いことが知られている。それゆえ、胎仔脳は低酸素に対する保護機構をもつことが十分考えられる。私たちはそのメカニズムを明らかにしようとしている。本研究は胎仔脳において低酸素負荷後、Ca2+イオンの流入に続いて活性化されるアポトーシス誘導因子(カスパーゼー3、チトクロームC)の細胞内動態を光学的イメージング法により解析し、胎仔脳の保護機構について検討を行うものである。 母体ラットと臍帯でつながった胎仔を用いて、臍帯結紮による低酸素負荷を行い、上丘の[Ca2+]iの変化を測定した。胎仔脳では反応が弱いため、倍率40倍の対物レンズを用いて測定の感度を上げた。さらに、画像データの加算平均を行うための演算ソフトを用いて、胎仔上丘の微少領域のノイズレベルを減少させることができた。 臍帯結紮により、上丘の[Ca2+]iは増加しプラトーに達した。結紮後、[Ca2+]iの増加反応は上丘の外側から尾側のより広い領域に広がった。結紮解除後、[Ca2+]iは緩やかにもとのレベルに回復した。結紮解除から3時間後において、臍帯結紮による[Ca2+]iの増加反応は著しく減少した。上丘局所電気刺激による[Ca2+]iの動態と低酸素負荷の影響については今回改良した手技を用いて実験を進めている。今後、アポトーシス誘導因子であるカスパーゼー3とチトクロームCの細胞内動態と低酸素の影響について調べる。さらにカスパーゼー3阻害剤とチトクロームCの放出抑制剤の効果についても検討して行く。
|