研究概要 |
本研究の目的は多チャンネル近赤外光脳機能画像計測システムを利用して、未熟児・新生児期における運動・感覚野の機能的支配領域の局在化の発達的変化を捉え、脳室周囲白室軟化症、頭蓋内出血などの脳障害を認める児の治療・リハリビテーション介入の時期やその方法の確立、可塑性の可能性の評価などを行うことである。研究初年度に行った研究成果は以下の通りである。 1)未熟児、正期産新生児から成人までの頭部形状に応じた、両側大脳半球を同時計測可能な計測プローブの組み立てを行った。特に体重700,1000,2000,3000gの4種類の頭部形状に合わせた側頭・頭頂部同時測定可能ブローベも作成した。 2)脳血流の揺らぎの局所的特徴やそれらの相互関係を解析する目的に、装置のノイズを除去し生体情報のみを捉える信号処理法を検討し、頭部の安静時での測定データを用いた結果、130msecで測定した場合では、Savitzky Golay法を用いて54ポイントのスムージング処理が最適であることを見出した。 3)7例の新生児を対象に、他動的な上下肢の屈曲伸展による運動感覚刺激を行った場合、刺激により対側運動感覚野の脳血液量の増加を認め、その反応が最大となる時間は、下肢の刺激が9,7秒、上肢が10.3秒であり、従来の成人の報告例より遅いことが判明し、発達的に変化することが示唆された。また同側運動感覚野での脳血液量の増加も認めるが、対側よりもその増加量は少ないことが確認された。 4)刺激による、脳血液量の増加領域の解析法については、現在検討中である。 5)自然静睡眠状態での光刺激による後頭部視覚野の脳血液量反応パターンの発達的変化を研する目的で、成人のノンレム睡眠状態との比較検討をした。その結果、成人では脳血液量が増加するが、新生児では反対に減少することを見出た(Human Brain Mapping,2004)。 6)多層構造である頭部の近赤外光測定における光路長の問題に対し、近赤外時間分解測定装置を用いて新生仔豚を対象に吸入酸素濃度の変化させ検討した結果、光路長は低酸素になるほど短くなることを見出した(Optical Review,2003)。
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