研究概要 |
本研究の目的は多チャンネル近赤外光脳機能画像計測システムを利用して、未熟児・新生児期における運動・感覚野の機能的支配領域の局在化の発達的変化を捉え、脳障害を認める児の治療・リハリビテーション介入の時期やその方法の確立、可塑性の可能性の評価などを行うことである。本研究費補助金による研究成果は以下の通りである。 1)10例の新生児を対象に、他動的な上下肢の屈曲伸展による運動感覚刺激を行った場合、刺激により対側運動感覚野の脳血液量の増加を認め、その反応が最大となる時間は、下肢の刺激が16秒、上肢が18秒であり、従来の成人の報告例より遅いことが判明し、発達的に変化することが示唆された。また同側運動感覚野での脳血液量の増加も認めるが、対側よりもその増加量は少ないことが確認された。更にこの運動感覚野の頭頂・側頭部における局在性は、下肢が上肢より広範囲であることが確認された。 2)自然静睡眠状態での光刺激による後頭部視覚野の脳血液量反応パターンの発達的変化を研究する目的で、成人のノンレム睡眠状態との比較検討をした。その結果、成人では脳血液量が増加するが、新生児では反対に減少することを見出した(Human Brain Mapping,2004)。 3)近赤外光時間分解測定装置の臨床応用のため、基礎的検討として新生仔豚を対象に吸入酸素濃度の変化させた研究の結果、光拡散係数は酸素濃度を変化させても変化せず、吸収係数を用いたHb値の算出では、水以外のbackground absorptionの決定が問題であることを見出し、新たなbackground absorptionを算出し、定量的測定の問題を解決した。(J Biomed Opt,2005) 4)近赤外光時間分解測定装置での早産児及び正期産児の測定により、光拡散係数:は在胎週数に比例して大きくなり、解剖学的変化を捉える新しいパラメーターとなり得ることを見出した。また同時に脳血液量が在胎週数に比例して増加し、頭部Hb酸素飽和度が減少することを報告した。(Pediatr Res,2005) 5)新生児における言語発達の左右優位半球の関与について、多チャンネル近赤外光脳機能画像計測システムを用いた検討をした結果、早産児では右優位であり、正期産児においては左右優位性がなく、3-6ヶ月児では左優位である可能性が示された。(2004年日本周産期・新生児医学会及び日本小児科学会学術集会にて発表)
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