研究課題
最初、ショウジョウバエの発生に関与する遺伝子としてみつかったNotchは、哺乳類においてNotch1-4と4種類存在し重要な働きを有することが明らかになっている。組織によっては幹細胞の維持に働いているが、皮膚においてはNotch1が細胞増殖を抑制して分化を促進する働きを有することを私たちは明らかにした。しかし、Notch1の働きが明らかになる一方で、未分化な状態で活発に増殖を続ける基底細胞においてもNotch1が発現しているのはなぜかということが疑問となった。基底細胞ではNotch1の働きを抑制する因子が特異的に存在するのではないかと私たちは予想し、検索を試みた。その結果、代表的な癌抑制遺伝子であるp53のホモログであるp51がNotch1の働きを抑制することを見いだした。培養表皮細胞でp51の発現量を変化させると、p51がNotch1の活性に対して抑制的に作用していた。p51が優位になるとNotch1の働きは抑制され、未分化なマーカーであるintegrinの発現が保たれたが、逆にp51が減少するとNotch1が優位となりintegrinの発現は減少した。p51とNotchのバランスによって、表皮細胞の増殖と分化が大きく制御されていた。このことから、表皮細胞はじめ重層扁平上皮では、p51が優位であると細胞は未分化な状態に維持され増殖を継続し,一方p51が減少してNotchが優位になると増殖を停止し分化をスタートすると考えられた。
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