研究概要 |
目的」単純型先天性表皮水疱症(EBS)はケラチン遺伝子異常によりケラチン分子さらにケラチン中間径線維(KIF)構築異常をもたらし基底細胞内に裂隙をきたし、臨床的には水疱を生ずる遺伝性疾患である。最近研究代表者らは炎症を伴いかつ遠心性に拡大かつ治癒する紅斑と水疱を形成するという特異な臨床像を呈したEBSを経験し、その遺伝子解析からケラチン5(KRT5)の読み過ごし変異から、正常よりも長いアミノ酸鎖を形成したことを初めて報告した。今回の研究は、この症例において遺伝子異常により生じた変異アミノ酸、変異ケラチンがKIF形成にどのような影響をもたらし、さらに角化細胞の運動や分化および皮膚の炎症惹起にはどのように関わってくるのかを解明することを目的とした。 「結果」 1)患者および正常コントロールのgenomic DNAを鋳型にしてケラチン5(K5)の変異を含むエクソン9をPCRで増幅、断片をサブクローニングした。さらにシークエンスで変異部位を確認した。 2)変異K5をpCMVベクターを用いて種々の培養ケラチノサイト(HaCaT, DJM-1,NHEK)にトランスフェクションし形態的異常を観察した。wild typeに比べ変異K5遺伝子を導入したHaCaT, DJM-1でケラチン凝集塊が多い傾向があったが有意差はなかった。NHEKでは凝集塊に差はなかった。これは患者病変部の電顕像でtonofilamentの異常凝集塊がみられなかったことと一致し、この変異がケラチン線維形成には大きく影響しないことを示唆している。
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