研究概要 |
薬剤アレルギー患者からの検体採取および薬剤反応性クローンの樹立 当科に受診した薬剤アレルギー患者10名より,末梢血を採取し,単核細胞を調整して冷凍保存した.一部は,薬剤添加リンパ球増殖反応試験を行い,薬剤濃度依存性の増殖を確認して診断の根拠とした. 薬剤アレルギーの内,急性汎発性発疹性膿疱症の患者4名(アモキシシリンによるもの3例,ラニチジンによるもの1例)から,薬剤反応性クローンを9株樹立し,金製剤による多形紅斑型薬疹患者1名から,14株のT細胞クローンと2つのT細胞ラインを樹立した.それらのT細胞受容体Vβ鎖,フェノタイプ,ケモカイン受容体の発現,非特異刺激におけるサイトカイン産生を調べた.その結果,反応するT細胞のT細胞受容体Vβ鎖に偏りは認められず,また,反応T細胞のフェノタイプはCD4陽性とCD8陽性の両者がみられた.急性汎発性発疹性膿疱症においては,ケモカイン受容体は,CXCR3を発現するものが殆どであり,興味深いことに,腸管への特異的遊走を示すCCR9を発現するものもみられた.産生サイトカインは,インターフェロン-γやインターロイキン(IL)-2などのTh1タイプのサイトカインであった.また,これらのT細胞クローンは高率に好中球遊走活性をもつIL-8やTNF-αを大量に産生しており,本疾患病態を形成するために重要な役割を演じていると考えられた.また,金製剤における薬剤アレルギーでは,組織主要適合抗原が一致しない抗原提示細胞によっても,金製剤添加時に増殖反応を認め,薬剤抗原認識には,従来の外来抗原認識機構と異なったメカニズムが存在する可能性が示唆された.
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