抗DFS70抗体は当初、米国人の間質性膀胱炎患者中の抗核抗体の一種として発見されたが、我々の解析で同抗体は各種膠原病患者には殆ど検出されず、アトピー性皮膚炎(AD)で最も頻度的に多く、3割近くのAD患者に検出されることが判明している。DFS70はストレス反応とも関係する分子で、細胞の成長因子としての機能を担うことから、同分子に対する自己免疫反応の解析はADや自己免疫疾患の病態成立機序の解明に役立つと思われる。 1、597名の病院職員について抗核抗体と抗DFS70抗体の有無を調べたところ、2割の人に抗核抗体が陽性で、その半数以上に抗DFS70抗体が確認された。つまり驚くべき事に、健常人の1割以上が抗DFS70抗体を有していた。また、アンケート調査により抗体陽性の人にはアトピー性皮膚炎の有症率が高いことが判明した。 2、DFS70抗原の自己免疫エピトープは、蛋白の限られた部分に集中しており、αヘリックス構造が関与していることが確認された。またこのメジャーエピトープ部分蛋白を用いて抗体検出のための高感度ELISAを開発しえた。 3、アトピー性皮膚炎にもしばしば合併する脱毛症における抗DFS70抗体を調べたところ、健常人に比べて有意に陽性率が高く、また脱毛が重症なタイプになるにつれて陽性率は上昇した。毛組織におけるDFS70遺伝子と蛋白の発現も確認され、DFS70が成長因子であることを考慮すると、脱毛症においてDFS70の抗原抗体システムの大きい関与が考えられる。 4、DFS70抗原の定量系の開発のため、サンドイッチELISA開発のためのモノクローナル抗体を数種クローン化できた。
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